こんにちは!ブダペスト在住Webデザイナーのみほこです。
去年のブログ、「ブダペスト在住デザイナー最近のお気に入りヨーロッパファッションブランド」でも書きましたが、最近、Sézane(セザンヌ)というパリのファッションブランドがお気に入り。
私は去年まで知らなくて、Xのとあるポストで知ったのですが、どうも今世界的に大人気らしいです。
実店舗はまだあんまりなくって、ヨーロッパでもほとんどの店舗がフランス国内、あとはスペインとロンドンにあるくらいかな?(2025年5月時点)
あとはアメリカとかにもあるみたいです。
なので私も普段はもっぱらオンラインショップでの購入。
先週末に、25年ぶりにパリに行ったので、念願だったSézane(セザンヌ)の実店舗へ足を運びました。
お店に行く前に、Googleマップで調べたんですが、レビューに「並ぶ」と書いてあって目を疑いました。え、今時お洋服のお店で並ぶとかある・・・?
代官山の謎の列を思い出しますね、40代以降の人なら分かりますかね・・・
そう、お洋服のお店で並ぶって、ネットがなかった時代のことじゃない?
半信半疑で行ったところ、やはり並んでました笑
私が訪れたのは、1 rue Saint Fiacre, 75002 Paris、Sézane(セザンヌ)の一号店です。


画面越しに感じていたブランドの世界観は、リアルな空間でさらに深まりました。 けれど一方で、欲しかったアイテムは全ては手に入らず……。
どうもSézane(セザンヌ)はオンラインの方がメインで、店舗用の在庫は限られているらしい。
夏用に斜めがけできるバスケット素材のバッグと、ゴールドのフラットサンダルが欲しかったんですが、欲しかったサンダルは見つからず。見た感じ服も靴も鞄もオンライン上で見つけられる種類の半分も置いてなかったですね。
でも実際にお店に行ってみて、オンラインと実店舗のイメージの乖離が全くなかったのは驚きました。店舗が少なくても、世界的に人気である理由がわかります。
個人的には、いい意味で、オンラインでのお買い物の満足度が十分高いので、実店舗には行く必要が特にないなって思いました。
さて、ところでSézane(セザンヌ)ってなんでこんなに人気なんでしょう?お洋服が売れにくいと言われているこの時代に、並ぶほどの人気の秘訣とは?
私はお仕事でブランディングやマーケティングをやっているので、俄然興味が湧いてきました。
この記事では、ヨーロッパ在住のデザイナーという立場から、Sézane(セザンヌ)の人気の秘密を改めてじっくり分析してみたいと思います。 なぜこんなにも多くの人が惹かれるのか? ファッションの枠を超えた、ブランドの在り方に迫ってみます!
1. Sézane(セザンヌ)とは? “ただのおしゃれ”ではないブランド
Sézane(セザンヌ)は2013年にパリで誕生した、オンライン発のフランスブランド。 創業者は、モルガン・セザロルさん。もともとヴィンテージの服をリメイクしてオンラインで販売していた彼女は、「時を経ても愛される、タイムレスな服」を自らの手でつくりたいという思いからブランドを立ち上げました。
立ち上げ当初から、販売はオンラインが中心。 いまでこそ当たり前になった「D2C(Direct to Consumer)」というモデルを、 フィジカル店舗に依存せず、オンラインを起点に顧客との関係性を築くスタイルで先駆的に取り入れたブランドです。 同じD2Cでも、ZARAのような大量生産型ではなく、Sézane(セザンヌ)はよりパーソナルで持続可能な関係づくりを重視していました。
そしてさらにそこからSézane(セザンヌ)が人気となった理由は、「ファッション」そのもの以上に、その奥にある世界観が、 あまりにも丁寧に、魅力的に編み上げられているからです。

2. デザイナーとして惹かれる、Sézane(セザンヌ)の美意識
Sézane(セザンヌ)の服は、ベーシックなのに、どこか特別感がある。 それは素材の選び方や色のトーン、ボタン一つ、ステッチ一つにまで「さりげない工夫」が込められているからだと思います。
デザインを生業にしている立場から見ると、Sézane(セザンヌ)の服は「説明できない魅力」がとても多い。 たとえば、定番のGaspardカーディガン。どこにでもありそうで、どこにもないバランス感。 体のラインを拾いすぎず、でもちゃんと女性らしいシルエット。 ヨーロッパの街にすっと馴染むニュアンスカラー。
それは決して、派手ではなく、媚びてもいない。 けれど、纏った瞬間に自分の感性にフィットする。 “自分らしさを引き出してくれる服”という感覚が、Sézane(セザンヌ)にはあります。
3. ブランドが「モノ以上のもの」になった理由
Sézane(セザンヌ)の強みは、服のデザインだけではありません。 私が最も感心したのは、「ブランドの伝え方」そのものに美意識が宿っていることです。
たとえば、ニュースレター。 新作が出たことを知らせるだけでなく、まるで詩のような言葉と美しい写真で、読む人の感情を動かしてくる。 SNSでも「商品」より「世界観」を伝える投稿が多く、あくまで自然体で、押しつけがましさがない。
さらに、実店舗(アパートメントと呼ばれています!可愛いですよね。)もただの販売空間ではなくって、 まるで友人の素敵な家に招かれたような空気感で、「ブランドの世界に入り込む体験」が用意されています。
ものを売る、のではなく、素敵な世界観を共有してくれる。 それが、Sézane(セザンヌ)のマーケティングの本質だと思います。
4. Sézane(セザンヌ)が「時代にフィット」した理由
Sézane(セザンヌ)がここまで多くの人に支持されている背景には、 現代の私たちの「ものの選び方の変化」が大きく関係していると思います。
一昔前までは、「流行っているから」「みんなが持っているから」といった理由で服を買うことが多かった時代。 でも今は、「本当に気に入ったものを、できるだけ長く大切に使いたい」と考える人が増えています。 いわゆる脱・トレンド消費、エシカルな購買行動が当たり前になりつつあります。
Sézane(セザンヌ)は、その流れを「理想的なかたち」で捉えています。
- トレンド感はあるけれど、一目で古くなるようなデザインではない
- オーガニックやリサイクル素材を多用し、透明性のある生産体制
- セールをほとんど行わず、アイテム自体の価値を丁寧に守っている
特にベーシックな商品や定番商品は、数年に渡り同じものが売られているところが、個人的には好印象です。
今年は必要ないけど、来年欲しいかも、って時ありますもんね。慌てて買わなくていいところもいいなあと思っています。
こんなふうに、ファッションに対して、「軽やかさ」と「責任感」の両方を持っているところが、 今の時代にぴったりとフィットしているのです。
5. 実店舗で感じた、“買えなくても満足できた理由”
実は今回、パリで初めて訪れたSézane(セザンヌ)の店舗では、 本命だったアイテムのうちの一つは在庫がなく購入には至りませんでした。
けれど、それでも「来てよかった」と素直に感じました。
空間やインテリアの美しさ、スタッフが手渡してくれたセザンヌのカップに入ったお水、ディスプレイの雰囲気。 どれもが、ブランドの世界観と丁寧に連動していて、「ああ、私は今Sézane(セザンヌ)の物語の中にいるんだな」と感じさせてくれる体験だったのです。
その心地よさは、モノを手に入れた満足とはまた別の、記憶に残る満足感として今も残っています。
ブランドの価値って、商品を持つことだけではなく、 「ブランドとどんな時間を過ごしたか」にも宿るのだと、改めて気づかされました。

6. デザイナーとして学べる、Sézane(セザンヌ)というブランドの在り方
デザインという仕事に携わっていると、どうしても「見た目」や「差別化」に目が行きがちです。 けれど、Sézane(セザンヌ)から学べるのは、それ以上のこと。
- どんな世界観を持つか
- どんな哲学を商品に込めるか
- 誰に、どう寄り添うブランドでありたいか
この「軸」がぶれていないからこそ、Sézane(セザンヌ)は多くの人に長く愛されているのだと思います。
そしてその軸は、たった一人の女性の個人的な美意識から始まっている。 つまり、ブランド作りにおいて最も大切なのは、「自分の中にある、正直な感性を信じて形にすること」なのかもしれません。
7. まとめ:Sézane(セザンヌ)が教えてくれる、これからのブランドのかたち
Sézane(セザンヌ)は、単に「服がかわいい」から人気なのではなく、 選ぶ人の価値観に、そっと寄り添ってくれるブランドだからこそ、支持されているのだと思います。
パリの街角にも、オンラインの小さな箱にも、 一貫して流れているのは「私らしくありたい」と願うすべての人へのエールのようなもの。
ブランドにとって本当に大切なのは、流行ではなく、共感される理由を持つこと。 そのことを、ヨーロッパで暮らす一人のデザイナーとして、Sézane(セザンヌ)から深く教わった気がします。