林檎

AIを活用するときの考え方とポイント -平均化と記号接地-

今日は、少しだけ難しいお話になるかもしれませんが、今皆さんが知っておいた方が良いと思う「AIを活用する時の考え方とポイント」についてお話ししたいと思います。キーワードは「平均化」「記号接地(きごうせっち)」です。

「平均化」はなんとなくイメージがつくかと思いますが、「記号接地」とは一体何なのか。私も最近知った言葉なのですが、お付き合いのある税理士の良子さんのメルマガで紹介されていて、新しく覚えた言葉はすぐに使ってみたくなるタイプなので(笑)、このテーマで進めてまいります。

ユーザーニーズを捉えすぎた結果の「平均化」

先日、X(旧Twitter)で、ウェブ系のお仕事をされている相原ゆうきさんのあるポストを見かけました。ネット広告の「宅食(配食サービス)」のバナーを数社分集めて比較されている内容だったのですが、それらを並べてみると「どこが良いのかわからない状態」になっていたそうです。

どの会社もユーザーニーズを捉えすぎた結果、「安くて、美味しくて、健康的」という似たような訴求になってしまい、パッと見ではどこも同じに見えてしまう。私はこれを見て、「AIを活用してクリエイティブを作っていくと、まさに同じようなことが起こるだろうな」と感じました。

AIは「統計的な正解」を導き出す計算機

なぜAIを使うと同じようなものが量産されるのか。それは、AIが情報を精査して「平たく平均的に出す」のが得意だからです。

AIの仕組みを簡単に言えば、「次に続く確率が最も高い言葉」を予想する巨大な計算機です。オンライン上の膨大なデータを学習し、統計的な平均値を出します。特徴的な意見や極端な表現は「ノイズ(平均外)」として取り入れられません。また、最近のAIは間違いを避けるために、安全で無難な回答を優先する傾向があります。

例えば、10社がAIを使って「いい感じの宅食バナー案を出して」と頼めば、世の中の「いい感じ」の平均値が抽出され、結果としてどれも似たようなデザインになってしまいます。これがAIによる「平均化」です。

誰でも短時間で綺麗なものが作れる今の時代、それ自体に差別化の価値はありません。100人中100人が同じことができるなら、そこに希少性はないからです。だからこそ、人間の頭で「ユニークさ」や「ブランディング」を設計し、ポイントを絞ってAIに依頼していく姿勢が大事になります。

AIに欠けている「記号接地」とは

もう一つのポイントが「記号接地」です。これは認知科学の用語で、簡単に言うと「言葉と実体験の結びつき」のことです。

デザイナーのナカツカレイオさんが、「AIが作ったLP(ランディングページ)の調整依頼が来るけれど、パッと見は良くても文脈がなくて非常にやりにくい」といった内容をポストされていました。この「なんか違う、文脈がない」と感じる正体こそが、AIに記号接地がないからです。

AIは言葉を「計算」していますが、「理解」はしていません。 例えばAIに「リンゴ」について聞けば、ネット上のデータから「赤くて甘い果物」という統計的な解釈を返してくれます。しかし、私たちはリンゴと聞けば、あのシャリッとした食感や、甘酸っぱい香り、口の中の感覚といった「実体験(身体性)」を伴って理解しています。

Gemini(GoogleのAI)に聞いてみたところ、面白い回答が返ってきました。

「AIは辞書を丸暗記しているけれど、一度も外に出たことがない人のようなものです。海は青くて広いとは言いますが、潮の香りや波に足をさらわれる怖さは知りません。だからAIの作るものには、実感を伴う重みが欠けてしまうのです」

まさにその通りで、実感を伴う「一通りの経験」がつながっていないため、全体的な統一感や文脈がどこかチグハグになってしまうのです。

AIの「得意」と「苦手」を使い分ける

これらを踏まえて、AIの得意・苦手を整理してみましょう。

AIが得意なこと

コードを書く: プログラミングのように「動くか動かないか」の明確なルールがあるものは非常に得意です。
既存の知識の整理: ハウツーや法律など、既に答えがあるもの。ただし、最新の法改正などは反映されにくい(古い情報の割合が多いため)ので、人間による確認が必要です。

AIが苦手なこと

マーケティングとデザイン: これらは「正解」が一つではありません。ターゲットや時代の流れ、企業の姿勢によって「独自の正解」を作る必要があるからです。
ユニークネス(独自性): 他と違うことに価値がある分野において、仕組み上「他と同じ(平均)」を目指してしまうAI単体では、価値のあるクリエイティブは生み出せません。

まとめ

AIは「過去の正解」をまとめるのは得意ですが、「未来の正解」や「新しい価値」を作るのは苦手です。

行動ルールや法律のように過去から積み上がったものはAIに任せればいい。しかし、デザインやマーケティングのように、「まだ誰もやっていないからこそ価値が出るもの」については、私たちの違和感や感性、つまりAIが持てない「身体(実体験)」を使った判断が必要なのです。