AIを使うときは「自己満足」に注意

  • Instagramの「AI info(AI情報)」ラベルの仕組みと、システム判定の現状
  • AIによる「一見良さげな成果物」がもたらす自己満足と、読み手に伝わる違和感のリスク
  • 効率化に惑わされず、潜在顧客からの信頼を損なわないための発信姿勢と想像力の重要性

2024年からスタートした「AIラベル」

普段からInstagramを見ている方は多いと思いますが、投稿の左上にあるアカウント名の下(アイコンの横にアカウント名が表示される部分の真下)に、「AI info(AI情報)」というラベルがついているのを見たことはありますでしょうか。

私自身はあまりよく知らなかったのですが、これは2024年からMeta社がスタートした、透明性を高めるためのラベル表示だそうです。AIで作ったコンテンツが増えてきたため、AIによるものかそうでないかを明確にしていこうという動きですね。パッと見では判断が難しいものも多いので、人々が騙されないようにそういった運用を始めたようです。

私自身、普段そこまで長時間Instagramを見ているわけではないのですが、それでもこのラベル表示を見かけることはあまりありませんでした。明らかにAIを使っている投稿は当たり前に見かけるものの、ラベル自体はついていないことが多かったからです。

しかし先日、たまたまフォローしている方の投稿に「AI info(AI情報)」とついているのを見かけました。その方は投稿の雰囲気が少し変わったなと思っていて、正直ラベルがついていなくても「なんとなくAIを使っているな」という感じはしていました。

ただ、その方はエンタメとして面白い画像や動画を投稿しているわけではなく、ビジネスやマーケティングのために仕事の内容を発信されていたので、見ていて「もったいないな」と感じてしまったんですよね。

AIだと思うと人は見る気を無くしてしまう

そもそも「AI情報」とついてしまうと、少し見る気をなくしてしまう部分もあると思います。よほど面白いものでない限り「AIで作ったものならいいかな」と思ってしまったり、AIボットが適当な内容を自動投稿しているのではないかと思われたりしてしまいます。

ただ、これはラベルだけの話ではありません。「AIを使ったな」と分かってしまう投稿をしてしまうこと自体が、もったいないと感じるのです。

AIを使うと、画像も文章も一見良さそうなものができ上がります。しかし、それは結局「一見」に過ぎません。

パッと見では「こんなに時短ができて良さげなものが作れた」「これならデザイナーに依頼しなくてもできる」「これだけ簡単にできるなら、今まで更新できていなかったInstagramも運用できるぞ」と思ってしまう気持ちはすごく分かります。

私自身も、普段のクライアントワークの合間にブログやnoteを書いたりポッドキャストを更新したりしているので、どうしても時間が取れないときに「AIを使って記事を書いてみよう」と試したことがありました。

ですが、すぐに使うのをやめました。一見いい感じに仕上がるのですが、どこかで聞いたことがあるような、ありがちな文章になってしまうからです。自分らしくもないですし、かといって言い回しや表現だけを少し直せばいいという問題でもなく、直すのであれば結局最初から書き直さなければならなくなります。「それなら一から自分で書いた方がいい」と思い、AIで記事を書くのはやめました。

もちろん、アウトラインの作成や「どういう記事・ポッドキャストにしようか」という構成の壁打ち相手として助けてもらうことはあります。ただ、最初のアウトプット(最終的な成果物・クリエイティブ)としてAIが出したものをそのまま使うかどうかは、ケースバイケースだとしても慎重に考えなければいけないと思っています。

Xなどでも、きちんとしたデザイナーさんは「クライアントワークの最終成果物として生成AIは絶対に使わない」とおっしゃっています。デザインを本業としない方にとっては「AIで手軽に作れて楽だ」と感じるかもしれませんが、「本当にそれでいいのか」は一度立ち止まって考えた方がいいと思います。

AIでの生産性の向上はあんまり意味がない?

少し話は変わりますが、最近、アメリカのMicrosoftでエンジニアをされている牛尾剛さんがYouTubeでAIについてお話しされているのを拝見しました。動画のタイトルは『AIエージェントブーム後の世界 一流は頭をこう使う』というインタビュー形式のもので、とても勉強になる内容でした。

その中で、牛尾さんは「AIにいくつも仕事を任せて生産性を上げることには、あまり高い価値がない」というお話をされていました。

今はAIを使って2つも3つも仕事を並行して走らせ、自分は確認だけをするというスタイルが流行り、当たり前のようになってきています。しかし、並行して走らせている仕事も結局は自分で管理・チェックしなければならず、そこに思考のリソースが割かれてしまいます。

そうして並行してできてしまう仕事は、結局のところ大した内容ではない(優先度がそれほど高くない)のではないか、という指摘でした。

確かに「並行して作業をこなしている感」や満足感は得られますし、AIインフルエンサーの方々も「いかにAIで生産性を上げるか」「乗り遅れてはいけない」と発信されています。しかし実際には、優先度の高い一つの仕事に対して集中し、時間をかけて成し遂げた方が圧倒的に価値が高く、最終的な効率も良いのではないか、というお話でした。

この「やってる感」や「こんなにできたという満足感」に惑わされてはいけないなと、改めて感じました。

人が持っている違和感センサーは馬鹿にならない

Instagramの「AI info」ラベルの話に戻りますが、現状のシステム判定はついたりつかなかったりと、あまり当てにならない部分があります。明らかにAIっぽいコンテンツでもラベルがつかないケースは多いです。

今後判定が強化されていく可能性はありますが、それ以上に私たちが気にしておくべきなのは「人が持つ違和感センサー」です。

「AIっぽい無難なことしか書いていない」「どこかで読んだような感じがする」という違和感は、ごまかすことができません。そう思われてしまうと、「このサービスから買う理由がない」「他でもいいのではないか」「安ければどこでもいい」と価格だけで比較されてしまいます。ある程度の価格帯の商品やサービスであればなおさら、その違和感が信頼を損ねる大きなリスクになってしまいます。

私自身も一人でデザイン事務所を運営しているため、AIのおかげで作業が効率化され、本当に助けられている部分はたくさんあります。

しかし、「決して自己満足になってはいけない」と強く意識しています。AIを使ってできたものを届ける相手(潜在顧客やお客さま)がいるのであれば、「その相手からどう見られているだろうか」という視点を常に持っておきたいと思っています。

「自分が楽をしたいから」「コストがかからないから」という理由だけで使っていないか。デザイナーへの外注費をカットできたというコスト面だけで満足していないか。会社の予算全体を考慮してコストカットが必要な場面はあるにせよ、「安くできた」「お金をかけずに作れた」という事実だけで満足していいのかどうか、という点です。

見る目と想像力を養い、「相手にどう受け取られているか」を都度しっかり判断していかなければ、AIを真の意味でうまく活用することはできないのではないかと感じています。

オーナー・Webデザイナー・ディレクター・髙田美保子
Writer

- 髙田 美保子

Design studio M. 代表
/Web Designer & Director

Web業界で20年近くにわたり、大手ECや多様な企業のWebディレクションおよびデザインを担当。
現在は、独自の美意識や世界観を大切にするアトリエ、アートスクール、文化系事業者を中心に、Webサイト制作から日々の保守・運用、マーケティング戦略までを一貫してサポートするパートナーとして伴走している。
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